5年前、60歳代の張さん(女性)は排便時の出血をきっかけに当院で大腸内視鏡検査を受けました。その結果、腸内に大小さまざまな腺腫性ポリープが多数見つかりました。この腺腫性ポリープは一般的な良性ポリープとは異なり、がん化のリスクがあるため、発見された場合は切除が推奨されます。
数が多かったため、医師の判断で2回に分けて十数個のポリープを切除しました。張さんは非常に意識が高く、その後も毎年欠かさず検査を受け続けた結果、毎回数個の腺腫性ポリープが見つかり、処理が必要となりました。この5年間で、がん化の恐れがあるポリープを合計30個以上切除したことになります。
医師によると、大腸ポリープ切除後の再発率は約20%とされ、これは食生活・生活習慣・体質・家族歴などに関係しています。張さんのように再発率が非常に高いケースは、体質や遺伝的要因が関係している可能性があり、高リスク群の人は定期的に大腸内視鏡検査を受け、ポリープががん化する前に早期発見・切除することが重要です。
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どのようなポリープにがん化のリスクがあるのか
大部分の大腸ポリープは大腸がんに進行しませんが、一部のタイプはがん化する可能性があります。その鑑別には大腸内視鏡検査による観察と分類が必要です。
・過形成性ポリープ:
過形成性ポリープは腸内でよく見られるタイプのポリープで、大きさは小さく、がん化することはほとんどありません。そのため臨床的には切除の必要はないと判断されます。このタイプのポリープは50歳以上の人に多く発生します。
・炎症性ポリープ
炎症性大腸ポリープは「偽ポリープ(仮性ポリープ)」とも呼ばれます。これは主に大腸粘膜の炎症により(例:潰瘍性大腸炎やクローン病など)、
粘膜が一部陥没したり、新しい粘膜上皮が盛り上がって形成されるものです。このタイプのポリープは血管が豊富で赤みを帯びた外観をしていますが、がん化することはなく、切除の必要もありません。
・腺腫性ポリープ
腺腫性ポリープは大腸がんの前段階とも言えるもので、ポリープが大きくなるほどがん化する確率が高くなります。大腸の腺腫性ポリープは形が不揃いで、赤みを帯びたものが多いのが特徴です。がん化のリスクが高いため、検査で見つかった場合は内視鏡で切除されるのが一般的です。ただし、ポリープが大きすぎたり、粘膜下層まで浸潤している場合は、外科手術による切除が必要になります。
また、「家族性大腸腺腫症(FAP:Familial Adenomatous Polyposis)」は軽視できない顕性遺伝性疾患の一つです。この疾患では子どもに50%の確率で遺伝し、早期に検査・治療を行わなければ、ほぼ100%の確率で大腸がんに進行します。
大腸内視鏡は最も直接的な検査方法
大腸がん患者のうち、家族に大腸がんの既往がある人は全体の約20〜30%で、残りの70〜80%は家族歴のない人です。しかも、大腸がんは初期には自覚症状がほとんどないため、早期発見の最も直接的で正確な方法は大腸内視鏡検査です。
当院の無痛・鎮静大腸内視鏡検査は、検査の精度と効率を両立しながら、受診者がより楽に・快適に・安心して検査を受けられるようにしています。
✔ AI大腸内視鏡検出システム
当院では、最新の「Olympus EVIS X1 CV-1500」内視鏡と「EndoAim人工知能(AI)内視鏡病変検出システム」を全面導入しています。「Olympus EVIS X1 CV-1500」は、高精度の画像強調技術と4K高解像度を備え、腸内の細かな組織や血管構造まで鮮明に確認できます。さらに、NBI(狭帯域光観察)や最大100倍の拡大観察機能を組み合わせることで、大腸表面の微細な血管や粘膜構造を強調し、小さな病変も見逃さない精密で安全な検査が可能です。
AI検出支援システムは、見落とされやすい微小ポリープを高精度に検出し、
その種類・大きさ・範囲を自動判別、切除の必要性を医師に補助的に提示します。正確度は95%以上に達します。
✔鎮静による「半睡眠状態」で実施(全身麻酔ではありません)
当院の無痛・鎮静大腸内視鏡検査は、全身麻酔ではなく鎮静法を採用しています。受診者は半分眠ったような、あるいは眠っている状態で検査を受けられます。検査中に異常が起きた場合も、患者はある程度反応できる状態にあるため、医師がすぐに対処可能です。全身麻酔に比べてリスクが低く、安全性が高いのが特徴です。
✔ 3日前からの低残渣食は不要 当日院内で腸を洗浄
大腸内視鏡検査の精度を左右する最大の要因は「腸内の洗浄状態」です。腸内に便が残っていると、病変が覆われて診断精度が著しく低下します。そのため、一般的な医療機関では、検査の3日前から低残渣食(食物繊維の少ない食事)を指示し、前夜に下剤を服用して自宅で腸を洗浄します。
しかし、一般の人は腸が十分にきれいになったかを自分で判断できず、また前夜に何度もトイレに行くことで睡眠不足や体調不良を招き、翌日の検査に影響することもあります。
当院では、3日間の低残渣食は不要で、前日だけ食事管理を行えば十分です。さらに、検査当日に来院してから腸洗浄液を服用する方式を採用しています。これにより、前夜はしっかり休息が取れる、専門スタッフの立ち会いで腸洗浄を行えるため安心、洗浄が十分に行われたことを確認した上で検査を実施できる、というメリットがあります。
家族歴・高リスク群は定期検査を
40歳以上、家族に大腸がん患者がいる、糖尿病、肥満、熱い・揚げ物・甘い食べ物を好む、喫煙・飲酒習慣がある、運動不足、夜更かしが多い方はすべて大腸がんの高リスク群とされています。
直系家族(親・兄弟姉妹・子ども)に大腸がん患者がいる場合は、定期的な大腸内視鏡検査を強く推奨します。特に「家族性大腸腺腫症(FAP)」の場合、子どもがこの遺伝子を受け継ぐ確率は約50%とされ、できるだけ早く大腸内視鏡検査によるフォローアップを開始し、早期発見・早期治療を目指すことが重要です。
