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健康診断の普及と胃カメラ検査の重要性が広く認識されるようになり、胃ポリープが見つかる人が増えています。胃ポリープ(gastric polyps)は胃粘膜にできる異常な隆起で、多くは良性ですが、中にはがん化のリスクを伴うタイプもあります。そのため、種類・原因・症状・治療・予防法を理解しておくことは、早期発見・適切な処置につながり、健康へのリスクを減らすことに役立ちます。
最近、当院を訪れた40代の教師は、普段から食生活や健康に気をつけていましたが、全身健診の胃カメラで驚くべき所見がありました。胃の中に無数のポリープが散らばり、大きさも0.3~1cmとさまざま。あまりの光景に驚かされました。
診断の結果、「多発性胃底腺ポリープ」と判明。胃底腺ポリープはほとんどが良性ですが、1cmを超えるものや表面にただれ・赤み・腫れがある場合はやはり切除が推奨され、長期的な経過観察が必要です。
胃ポリープは症状が出にくい
胃ポリープとは、胃粘膜が増殖してできる隆起性の病変で、単発性または多発性があります。見た目は平坦、乳頭状、または茎を持った腫瘤などさまざまです。
多くの場合、検査を受けるまで自覚症状はありません。サイズは数ミリから数センチまで幅広く、多くは良性ですが、タイプによってはがん化する可能性があるため、特にハイリスク群では注意が必要です。
胃ポリープの種類、原因とがん化率
胃ポリープは珍しいものではなく、一般的なのは胃底腺ポリープ、過形成性ポリープ、そして腺腫性ポリープの3種類です。胃ポリープの大部分は良性の胃底腺ポリープと過形成性ポリープですが、がん化しやすい腺腫性ポリープ(胃腺腫)は約6%~10%を占めています。
1. 胃底腺ポリープ(Fundic gland polyps)
最も一般的(約90%)で女性に多い。
家族歴や体質、または長期のPPI(プロトンポンプ阻害薬、いわゆる制酸薬)使用が関与。
通常は良性、がん化率は極めて低い(0.1%未満)。1cm未満は経過観察でよいが、1cm以上や表面に潰瘍がある場合は切除を推奨。
2. 過形成性ポリープ(Hyperplastic polyps)
胃粘膜の慢性的な炎症やピロリ菌感染に関連。慢性胃炎の患者に多い。通常1cm未満で良性ポリープ、比率は約5~10%を占める。
がん化率は1%未満だが、2cmを超えるとリスク上昇。
表面が「くされ苺状」で出血しやすい場合や、幽門部にあり十二指腸への食物の通過に影響を及ぼす可能性がある場合は切除を推奨。
3. 腺腫性ポリープ(Adenomatous polyps)
胃ポリープの1~2%を占める。腺腫性ポリープは腺細胞の異常な増殖であり、がん化リスクを持つ「前がん病変」。
ピロリ菌感染、萎縮性胃炎、腸上皮化生(胃が炎症を繰り返すと、胃粘膜細胞の一部が萎縮し、腸の細胞に変化)に関連。
サイズが大きいほど悪性化リスクが高く、特に2cm以上や絨毛状のタイプは危険性が高い。
発見された場合は基本的にすべて切除を推奨、毎年の胃カメラで経過観察。ピロリ菌感染があれば早期治療を推奨。
どうして胃ポリープができるの?
胃ポリープの形成は、多くの場合以下の要因に関連します。
- 慢性胃炎
- ヘリコバクター・ピロリ菌感染
- 制酸薬の長期使用(PPIなど)
- 遺伝的要因
- 飲食と生活習慣
高塩分・高脂肪・添加物が多い加工食品、喫煙・飲酒などが胃ポリープや病変のリスクを増やします。
定期的な胃カメラでポリープ予防を
胃ポリープは多くが無症状で、健康診断で発見されることがほとんどですが、大きくなったり多数できると、胃もたれ・膨満感・吐き気・食欲不振・消化不良・黒色便などを引き起こすことがあります。出血すれば貧血や胃痛の原因にもなります。
胃ポリープの大半は良性ですが、油断は禁物です。定期的な胃カメラ検査による早期発見と適切な治療・経過観察により、効果的に胃ポリープの形成を抑制し、がん化のリスクを防ぐことができます。もちろん、健康的なライフスタイルの維持、食生活の改善、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染予防などは、胃ポリープや胃がんを予防するための基本的な方法です。