大腸激躁症的診療近況
「過敏性腸症候群」(Irritable Bowel Syndrome通称IBS)はよく見られる病気なのに、現代医学では、過敏性腸症候群についての研究や報道が意外と少ないのである。「過敏性腸症候群」についての無知、また原因不明である点、正しい診断と効果のある治療が確率していないなどの理由から「過敏性腸症候群」という病気が重視されずにいるのです。「過敏性腸症候群」を正しく診断できない医者が「神経過敏」と判断することもある。実は、 IBS はかなり一般的な病気である。統計により「過敏性腸症候群」は風邪に次いで欠席・欠勤の理由に挙げられる程、身近な症状である。近年患者の増加に伴い見直されてきてはいるものの、排泄器官にかかわる症状であるために恥ずかしい思いをしたり、無知な心無い人々のために肩身のせまい思いをさせられたりしているのが現状である。この病気は患者の生活への影響も大きく、また医療費用もかさむため、近年臨床医師、研究者、医療給付機関や製薬工場などは次々にこの分野を研究し始めた。まだ十分ではないが、いくつかの診断基準と処置方式ができあがった。以下は「過敏性腸症候群」の紹介:
「過敏性腸症候群」(IBS)は主として大腸の運動および分泌機能の異常で起こる病気の総称。検査を行っても炎症や潰瘍など目に見える異常が認められないにもかかわらず、下痢や便秘、ガス過多による下腹部の張りなどの症状が起こる。以前は大腸の機能異常によって引き起こされる病気ということで「過敏性大腸症候群」と呼ばれていたが、最近では大腸だけではなく小腸にも関係することなどから「過敏性腸症候群」と呼ばれる。1944年PetersとBargen2人は「irritable bowel」を発表した。しかし、明確な定義と診断基準はすでに1978年にManningが発表している(Manning's criteria)。患者は以下の症状が2つ以上あれば「過敏性腸症候群」(IBS)の可能性が考えられる:(1)排便後腹痛が和らぐ(2)腹痛後軟便になる(3)腹痛後便通が頻繁になる(4)腹部膨満感(5)粘液が排泄される(6)残便感がある。
Manningの基準が診断基準として初めて採用されたものだったが、男性の患者に対して適合しない部分があることが分かった。そのため新たにローマ基準(Rome criteria)が発表された。1999年の第2版ローマの基準によると“患者は過去1年の中で12回以上の腹痛があり、また以下の症状が2つ以上あれば「過敏性腸症候群」(IBS)の可能性が考えられる:(1)排便後腹痛が和らぐ(2)腹痛とともに便通の回数が変わる(3)腹痛とともに便の外観が変化する
Manning基準であれローマ基準であれどちらも病状で診断するのである。「過敏性腸症候群」の診断方法は他の疾病と違って、検査値で診断の結果が現れるのではなく、精神疾病の診断方式に近い方法をとるのである。特に以下の症状があれば機能性疾患(例えば:炎症性消化管疾患と直腸癌)の可能性があるため、過敏性腸症候群にくわしい医療機関で検査を受けて確かめることが大切。:(1)5O歳以上で、過敏性腸症候群の症状が現れた場合 (2)病状が次第に悪化 (3)夜中に下痢と腹痛で起こされる (4) 便秘か下痢に悩んでいる、あるいは下痢と便秘を交互にくり返す (5)熱、貧血、直腸の出血、体重の顕著な減少、家族の中に大腸癌にかかった者がいる、その他(腹部の異常な腫れ、栄養不足、発疹、口腔の潰瘍、直腸の腫れ)
米国で一般内科の外来を受診している患者さんのデータベースを調べてみると、約12%の患者は「過敏性腸症候群」の症状で診察を受けている。イギリスでは「過敏性腸症候群」の患者は約30%を占めている。ただし採用される診断基準によって診断結果が異なる。統計によるとこの病気は東南アジアでもヨーロッパでも羅患率がとても高いことがわかる。羅患率は3%から20%までで、大人の発生率は毎年約0.2%-l%である。しかし上述のデータより実際の患者数は多いと考えられる。調査によると「過敏性腸症候群」の患者3~4人中、医療機関で検査を受けるのは1人であるとの報告がなされている。女性患者の受診率は男性より高い。一般的に言えば、男女比は3:lの割合で女性が多い。但しインドでは男性が女性より多い。上述の“性別による受診率の相違“は文化、ホルモン、また、大脳内の痛みに対する感受性及び物事の処理方法などにおける男女間の違いに関わってくる。男性では下痢型(diarrhea predominant、 D-IBS)、女性では便秘型(constipation predominant、 C-IBS)の傾向が強い。その他にまだ一部の患者は便秘と下痢の交替型(alternating、A-IBS)もある。
この病気の研究によると「過敏性腸症候群」と診断された患者を2~32年かけて追跡調査した結果、約2%の人は機能性疾患と診断訂正があったが、他の98%の人はそのまま「過敏性腸症候群」と診断されている。つまり症状が診断基準に符合するならば、「過敏性腸症候群」と診断できるのである。1~8年をかけて調査した結果は「過敏性腸症候群」患者の88%が今もその症状があることを訴えている。この病気の特徴は慢性的で繰り返すということである。
· 病理生理機構

一、腸の異常蠕動運動
大腸の蠕動運動異常の研究では下痢型の患者は大腸の収縮が速く、便秘型は遅いということが報告されている。腹痛時、大腸の蠕動運動が変化するだけではなく回腸と空腸の蠕動運動にも変化が起きるというのである。しかしこれらの研究ではIBSの症状を解釈できるような独特な蠕動運動異常を見つけることはできていない。研究者も蠕動運動異常の研究は病理生理の理解には役立ったが、その症状とIBSとは直接な因果関係がないとの結論に達した。それ故に現在 pathognomic の変化は診断の根拠にならないというわけである。
二、臓器あるいは脳の感受性の増加
高敏感度(度合)(hypersensitvity)は刺激に対して感受性が高まること。高警戒度(度合)(hypervigilance)はストレスをうけている状況で、周りの環境に警戒心を持つようになること。この2種類の現象はIBSの患者によく見られる。ある研究者はボールを利用して受験者の直腸の辺りに置き、押してみる。IBS患者の人は普通の人より痛みに対して敏感でvisceral hyperalgesia(直感的な痛覚過敏症)の状況であることを確認した。またIBS患者は直腸の周辺の腸が敏感になって、大脳の前頭葉脳の前部帯状皮質(Anterior cingulated cortex; ACC)の血行が普通の人より速いことがわかった。その大脳皮質は身体及び臓器の痛みに対する反応と密接な関係がある。大脳の刺激に対する反応は過去の記憶と大きく関係がある。またこの神経回路を伝わり痛みを抑制するメッセージを送ることも可能であるといえる。つまり、IBS患者の苦痛を除くために医師が中枢神経系の薬物(例えば:抗うつ剤)を使うことが有効であると理解できる。
(表1) 過敏性腸症候群の原因
( 表1 大腸激躁症可能的致病機轉 )
| *異常的大腸蠕動 |
| *臟器感受度增加 |
| *腸管の刺激物(例えば:乳糖、膽鹽、ガス等) |
| *腸道發炎、感染 |
| *ストレス |
三、腸管の刺激物
食物の中の成分で乳糖と果糖に含まれる化学物質が腸内で発酵し、生じた脂肪酸 (short chain fatty acid )と膽塩、ガスが IBS症候を悪化させる。このような理由から、IBS患者の腸は日頃の食事でも牛乳や小麦などの食べ物に敏感になり、中には大腸の蠕動運動が加速されるため、下痢になる患者もある。また、IBS患者によく見られる腹部膨満の症状は大腸で食べ物が発酵し生じるガスが多いためや、糖分のある食べ物の吸収が悪いのが原因である。特に「乳糖不耐症」は、北欧では10%程度だが、アジアでは40-60%の人に見られる。その中でも中国人は一番高いのである。
四、腸管の炎症
IBS患者の大腸或いは直腸を組織検査してみると、顕著な炎症は見られないが、これははおそらく先天的に腸の炎症に対する反応の鈍さも原因といえる。例えば食中毒患者の7%~30%の人はその後IBS の症状が起きると報告されている。またある研究では急性の細菌性胃腸炎の患者にその後IBSが起きる危険性は11.9 倍だと指摘している。これらの患者では感染した後リンパ球・enterochrmaffin cellsが明らかに増加する。また腸の炎症が起きた後prostaglandin、bradykinin、5-hydroxytryptamine(5-HT)が生じる。それはおそらくIBSの発症に関係があるとされている。その中で5- HTは最も注目され、この5- HTが胃腸の蠕動運動に大きく関わっていることから新薬が期待される。例えば5-HTは大腸の蠕動運動を緩やかにし大腸の緊張を和らげるのでD-IBS患者の症状を軽減でき、またC-IBS患者の便秘を治療することも出来るはずである。
五、ストレス
胃や腸には脳と同じ神経が非常に多く分布しており、脳と同様に「考える臓器」ということができる。また、胃腸と脳は自律神経によりつながっており、脳が不安や精神的圧迫などのストレスを受けると自律神経を介してストレスが胃や腸に伝達され胃腸の運動異常を引き起こし、腹痛や便通異常が発生するわけである。ストレスと情緒の反応は小腸と大腸の蠕動運動を変化させてしまう。臓器の敏感度(度合)を増加させ、そのためIBSの症状を起したり、悪化させたりする。普通、腸はゆっくりとした蠕動運動を繰り返し、食べたものを消化していくのだが、緊張したり、嫌なことに直面したりすると腸がけいれんなどを起こし、正常な働きをせず、腹痛を伴った下痢や便秘を引き起こす。半分ぐらいのIBS患者はIBS症状が起きる前に嫌なことに直面している。50%のIBS患者は焦慮、恐慌、妄想、うつ、敵意などの症状がある。会社員などは出勤前や出勤途上に、学生などは家を出る前などによく起こる。会社や学校へ行くのがイヤだという思いがそのような症状を引き起こすのである。特に児童の時期は虐待などにより躁鬱病になりやすい。またIBS患者も他の病気になりやすくなる。
治療と処置
IBSの治療効果は患者が期待してるほどすぐには出ないことが多い。今の所、IBSはコントロールするしか方法がない病気のため、患者は治療することによりIBSと共存することを考えるべきである。現在患者に対しての処置は二種類に分けられる:(1)教育とサポート (2)食べ物と薬と心理療法:
一、患者に対して適切な教育とサポートをする
大腸におけるその他の病気の可能性を否定できるならば、医者は明確に患者にIBSと癌は無関係であり、健康な人と同様の寿命が期待できることを告げるべきである。しかし、IBSの症状は繰り返して再発する可能性があるため、医者と患者との良好な関係は治療のポイントとなる。医者は患者のストレスの原因を調べ、前向きで積極的な態度で治療に臨むことを指導する。また患者を励ますようにすると効果的である。
二、食品、薬物、心理療法
1.繊維
過敏性腸症候群の人の中には、繊維質の多い食事をすると症状が改善する人もある。調理していないふすま大さじ1杯を十分な水分や飲みものと一緒に食事のときに毎回摂取するか、オオバコ繊維のサプリメントをコップ2杯の水とともに摂る。しかし、食物繊維の摂取量を増やすと、腹部膨満や鼓腸などの症状が悪化する場合もある。
食べ物に神経質になる必要はないが、なるべく整腸作用のある乳酸菌飲料などを摂取するよう心がける。腸管を刺激する脂肪、食塩、砂糖類、アルコール、カフェインはとりすぎないように気をつける。特に、脂肪分は胃に入ると腸管の収縮を促すので、腸管痙攣を悪化させるおそれがある。くん製や塩漬けなどの加工食品も避けた方が無難である。精製加工されることにより、ビタミン、ミネラル、繊維、たんぱく質などの価値ある栄養素が失われ、代わりに食品添加物などが加わるからだ。天然の食物繊維を摂取すべきである。
2. 鎮痙薬平滑筋の弛緩剤
Antispasmodic(痙攣止め、鎮痙剤)、抗コリン作用薬. anticholinergic 「概念」( コリン作用を阻害する薬のこと。)
腹痛. 平滑筋、特に消化管平滑筋の痙縮を抑制する薬物。 腸など内臓のけいれん性の痛みをおさえる。 そのほか、血管を広げ、血流をよくする作用がある。 胃炎、胆管炎、胆石などによる腹痛に用いられる。
antispasmodicとanticholinergicなどの平滑筋の弛緩剤がよくIBS患者の腹痛治療に用いられる。しかしその効果は学者に質疑される。最近この薬の効果について調査がなされた。それによると、15-63%の患者は腹痛が改善された。しかしmeta-analysis1類の薬だけを使用するのではなく、他の薬(buscopan或いはduspatalinなど)も一緒に使用するので、どの薬が有効なのかはまだ確認できていない。
3.下剤
多くの医師はC-IBSの患者に下剤を投与する。しかし下剤で治療効果が出る人は少人数なので下剤の治療効果はまだ認められていない。注意すべきなのはosmotic laxatives或いはstimulant laxativeでIBS患者を治療すると腹部膨満感や腹痛の症状が一層酷くなる可能性があることである。
4. 下痢止め薬
下痢止め薬の中でloperamideは明らかに効果がある。opioidsは下痢に対して有効だが腹痛に対して無効であるため、opioidsの使用を制限する、或いは間歇的に使うことにするべき。肝塩が含まれる薬(cholestyramineなど)は他の薬を使用しても効果が出ない患者に使用できる。しかし(bismuth compounds)の効果は現在まだ確認されていない。
消化管の機能を遅くする抗痙攣薬が処方されることがよくあるが、過敏性腸症候群ならだれにでも効果があるという保証はない。下痢止め薬は下痢に有効。ペパーミントオイルなどのアロマオイルは、鼓腸や痙攣などの症状に効果がある。
5. 抗うつ剤
IBS患者は精神症状を伴っている場合もあるためIBS患者に精神症状を治療する薬を出す医者もいる。抗うつ剤(tricyclic antidepressant、TCA)がIBS患者の痛みを緩和したり、腸の敏感度に対しても効果があることを発見した。TCAのIBS患者への治療では30%の患者に明らかな効果があったため、TCA薬は現在IBSの治療薬の中で一番効果があるとされている。しかしTCAの効果は2-3ヶ月連続使用しないと現われず、また副作用が大きいため、長期で症状がくり返し起きる患者にしか使用しないのである。その他の抗うつ剤、例えばSSRI(selective serotonin reuptake inhibitor)は治療効果があるかどうかがまだ確認されていない。ただ初歩段階の報告によるとこの種類の薬(mianserinなど)の治療効果はTCAに類似するところもある。
6. 5-HT抗拮剤あるいは協同剤
この種類の薬はまたserotonin receptor agonists or antagonistsと呼ばれる。5-HTは体内の重要な神経物質を伝達するので、中枢神経系に作用する。この薬物はneuroenteric modulatorsと呼ばれ、大脳の神経回路中の運動神経と感覚神経を調節する。また腸の蠕動運動と吸収も調整できるので近年ではよく使用されている。その中で最も有名なのはalosetronとtegarerodである。AlosetronはIBS患者の病状、下痢と生活の品質を改善が効果的で、すでに米国のFDA検査を受けた。しかし便秘と虚血性腸炎という後遺症が発生するため、2000年11月から使用できないこととなった。tegarerodはC-IBSの患者の便秘と生活の品質改善が実証され、すでに使用している国もある。この2種類以外にも臨床テストしている薬があり、その効果を期待する!
7.心理治療
心理治療の方法はリラックス、催眠術、認知行為の治療と心理治療の4種類がある。特に下痢と腹痛の症状が酷い患者及び精神疾病のある患者に対しての治療効果が高い。単に腹痛だけの患者に対してはあまり効果的ではない。IBS患者の種類による心理治療法の効果はまだ確認されていない。
心療内科でのIBSの治療目標は以下の通りです。
1)心身の苦痛の緩和
2)心身相関の理解
3)症状のセルフコントロール
初診時から心身両面にわたる病態理解を行います。症状がいつ頃どのような状況で起きたか、どんな場面で悪化するか、それ以外の心身の症状はないかなど、詳しく問診します。また日常生活の状態や、どう症状に対応しているか(対処行動)、症状をどう受け止めているか(認知)、周囲の反応(ソーシャルサポート)などについても確認します。
生活指導においては、規則的な食事や排便の習慣をつけることが重要です。そのために患者さん自身に症状の起きた状況などを記録させる「自己モニタリング」が有効で、心身相関への気づきを促すことにもなります。また、患者さんの症状に見合う薬剤を処方します(消化管機能調整剤、抗コリン剤、整腸剤など)。なお、症状と不安や抑うつなどの間に関連が強い場合は、抗不安剤や抗うつ剤向精神薬を用います(少量で有効なことが多い)。
・ 結論
IBS頻繁に見かける疾病であり、医者の診断と処置は非常に重要である。医師は慎重になお且つ正確で経済的に診断しなければならない。また患者と良い関係を維持し、患者に対して適切な教育とサポートをすることが必要である。病状の深刻な患者に対しては飲食、薬物と心理治療により症状を緩和させる。IBSは機能性胃腸疾病の代表だと思われ、人が涙を流すようによく起きる症状だと思う人もいる。またIBSを起こす原因は一つだけではないため、新しい薬物を開発することによってより効果がある治療が期待されている。