四十歳の陳さんはいつも忙しい会社員。タバコは吸わないが仕事の関係上お酒を飲む機会が大変多い。家族に大腸癌と肝臓癌を発病した者がいるので 忙しいながらも若い頃からできるだけ健康診断を受診するよう心がけていました。検査の結果はいつも大きな問題なし、ところが今回胃カメラの染色検査により食道の中ほどに不規則な粘膜病変を発見。組織検査の結果食道癌であることが判明。去年は何ともなかったので陳さんは少々当惑気味。幸いにも早期に発見されたため内視鏡下粘膜切除術で病巣を取り除くことに成功。回復も早く今はなにごともなかったかのように元気にしています。この陳さんは毎年受診していたお陰で深刻な事態を回避できた患者さんです。
実際には殆どの食道癌が嚥下困難、痛み、明らかな体重減少などの症状により発見されます。そうなると食道を切除し予後も楽観できません。かなり進行してから発見されるケースも少なくないため鎖骨にまで浸潤し、化学療法や放射線治療を余儀なくされます。発見時にはすでに転移していることも多く食道癌は癌死亡率の中で常に上位にとどまっています。
近年檳榔を習慣とする人が増加し、また喫煙、飲酒も増え食習慣の欧米化により胃食道逆流性疾病が増加してきました。これらはどれも食道癌罹患率を上げる要因となっています。食道癌は今や台湾十大癌死因の常連となってしまいました。 一般的には内視鏡検査は食道癌診断の大きな武器となります。食道粘膜病変であろうと食道ポリープであろうと內視鏡下では一目瞭然。ただし 早期(0期)食道癌や極軽度な変化は内視鏡で直接観察しただけではわかりにくいためさらに一歩進めたヨードとアニリン・ブルー染色法で細胞の異常を判断します。
文献によると内視鏡検査に染色法検査を補った場合異常部位の発見が更に容易になります。またその病巣は組織病理検査にて確定診断します。内視鏡は今のところ診断率の高い最も効果的な検査方法と言えるでしょう 。
内視鏡は目下のところ最新治療器具といえます。日本では内視鏡下における粘膜切除手術が盛んに行われています。特に浸潤が粘膜層までの初期病巣は内視鏡に切除機器を取り付け病巣を完全に切除することが可能です。腫瘍の完全切除は治癒率を65-90%にまで高めます。また、食道をそのまま保存することができ、外科手術に伴う様々な不便さとも無縁でいられます。回復も早く、普通に食事を摂ることができます。ただし、内視鏡手術は転移をしていない原発癌にのみ適用されます。粘膜下層より深い浸潤がある場合は適用されません。
この陳さんのような早期食道癌患者の大多数は自覚症状がありません。また、内視鏡検査においてもその変化ははっきりしません。見逃してしまう可能性さえ。そこで定期的な健診に加えて內視鏡染色法を受診する‥内視鏡下で切除可能な早期に食道癌を発見し早期治療をおこないましょう。内視鏡検査は食道癌の治療成績をグっと高める可能性があるのです。そしてそれが內視鏡に与えられた任務でありましょう。